年始2

1月5日

スーツ姿の人がインターネット上や市街に見受けられるようになった。いつの間にか私たちはまた、ありふれた祝福を経たありふれた倦怠と悩みに帰っていった。

 私は、「虚無い」「虚無〜ん」とよく口にする。「虚無」ではない。自分には「虚無」などという高尚かつ哲学的な言葉を扱う権利を持たないという遠慮からだ。「虚無い」「虚無〜ん」といった自らへの茶化しは、我がままな己への最大の譲歩なのである。

 小野と根岸と大船で会う。ラップをしたが、さてどうだか。酒がうまい。私はまたStrangersに戻ってきたのだ。あの8ヶ月とは縁はもう無い。それが良いと思った。

 映画までの時間つぶしに入ったスターバックス北方謙三の「棒の哀しみ」を読み終える。「棒の哀しみ」とはよく言ったものだ。

 辻堂で「キングスマン」を見る。辻堂という街がなんだかとても好きだ。なにかあるようでなにもない綺麗さが。映画自体は前作よりちょっと落ちるかなといった感じ。でも、スピリット(精神)ていいなって思った。間に合うかなと思ったけれど、終電を逃したのでタクシーで帰る。映画代より高くついた。ばからしい話だが、タクシーは好きだ。考えながら帰らないで済む。

1月6日

17時起床。「ウォールフラワー」を見る。いい人たちばかりで微笑ましかった。

1月7日

寝れないまま、堀切さんとPV撮影で水道橋。いろいろな人と何かを作ったりするのがとても楽しい!完全に弛緩している脳の一部分が目覚めるのを感じる。疲れたけれどとても充実していい日だった。こういう時だけが生きていると思える。JUSWANNA聴いて帰ってたらドーパミンが出てきて結局4時までビートを作っていた。

1月8日

ルノアールで根岸と音源を精査した。雨が強かった。集合で迷惑をかけた。女子バレーの試合をなぜかずっと見ていた。スポーツの試合とかに日に日に涙腺が弱くなっている自分に吐き気がする。

 黒沢清の「降霊」を見る。平凡な日常を許せなくなり、罪を犯した夫婦の取り戻せなさ。

1月9日

根岸に誘われて、大船で池野さんと飲む。大船には基本的に3人しかいないので新鮮だった。いい店に入った。夜の静かな街を歩いた。

1月10日

サイゼリヤ読書。風が強くて怖い。

とても嫌なことがあった。7秒前の自分を恨む。

相互理解を投げ出して、本当のことを話さなくなった自分という人間は、側から見たら迷惑そのものでしかない。そこからは何も生まれる余地が無いからだ。

分かってほしい、というより分からせたいという極めてエゴイスティックかつグロテスクな我が傲慢さに、お茶割りをかけてむせび泣く。

こういう時は度々幼年時代を思い出す。ユング心理学的発想だ。怒られる恐怖だけが記憶にある気がする。楽しかったのは水族館とハワイだ。

これは被害者的自意識がそう錯覚しているのだろうか。明日、この文章を読んだ時の自らの気恥ずかしさがそれを判断する。母親にも父親にもとうに理解というものを求めることは諦めきっている。本当のことを言うのは随分前にやめた。

 そういえば、上司と辞めた日に呑んだ時に、「自分を見せようとしない」と指摘を受けた。全くその通りだと思う。

 相談したり、願いを請うたりするのが苦手だ。そのくせ現在この様だが、まあ話したところでやっぱりろくなことがないと考えている自分がいる。

根本的に受動の姿勢が苦手なカッコつけの最悪の末路なのだ。誰も見ていないブログ上で、おいおいと自虐文を並びつらなる現時点で消えて無くなりたい気分だ。

話さなくなったことで周りの人を傷つける。俺の気など測りようもなくなってしまったのだから。相互理解の未来は潰えて、俺は空想の世界でまた勝手に目をキラキラさせる。要は向こうも放っておいてくれればいいのに、そうは行かない。人の情や理というものは得てしてそういうものなのだろうか。システムとは別に動いてるもの。そんな愛情を全く持ち合わせないし、向けられても返そうとも微塵も思えなかった。コミュニケーションが希薄化した現代の典型的末路。話したくない。

 人の気持ちが比較的分かる、ということを小さい頃は優しさにしっかり使えていたという自負がある。今となってはそれを他人を操作しようとしたり、撹乱したりすることばかりに使っている。

 こんな人間は早く死んでしまいたいし、当人もそう願っている。他の人に至っては、もはや死んでいようが死んでいまいが全く関係ない。他人に何をもたらせるかだけが人の価値で、当然俺には無い。生きていても今後孤独感は強まるばかりで、朝8時と乾いた口づけを済ませ、会社のコピー機とセックスをし、A4の赤ちゃんを寝かしつける。周りの人とは会わなくなり、周りの人は会う。おしまいであるおしまいである。今後生きていて、何を糧にすればいいというのだ。誰とも健全な関係をもてやしない。酔った帰りには死神だけだ。