人だけはまじで信用も期待もしない方がいい

 まじで。何もできないから。ハッタリかましているか笑いのセンスがなくて構って欲しいだけだから。すぐに帰った方がいい。お父さんの前で自作の歌を歌ってみよう。シャウトしながら。そこが君の居場所だったのだろうか。僕も一度行ったけれどトイレは汚れて、中はタバコの臭いで充満していて、会話は聞き取れなかった。みんな所在なさげにスクリーンをスクロールしたり、右に行ったあと人混みをかき分けて左にも行った。彼らがいつ帰ったのかは知らない。どんな顔で何を思い朝日を見て帰ったのかは知らない。

 スクリーンをスクロールしたのかもしれない。上下上下上下。20mm×43mmをスウィング。流れている音に合わせて腰を揺らした。どんどんダンダンダン。最初の10回くらいは調子が良かった。奇跡かとすら思った。10回目以降からは、まるで電車に揺られているような気分になって落ち込んでやめた。

  あそこの席にいる鬱病を声高に主張した女。今は夫の給料がその役割を果たしている。昔の写真であればあるほど彼女は綺麗になっていった。みんなの顔は等しくU字の唇と目をして、みんなが囲んで筋肉で1つの彫刻のデッサンを描いているようだった。  

 ガスバーナーでべっこう飴が出来てそれは化石のように綺麗だったのに、あの人が増えると急に大声になる河合塾の浪人生達はその透き通る美しさを理解しかねた。コンクリートにそれを乗せ、アリが近寄ってくるのを1時間授業を受けて楽しみにしていた。1時間もすればべっこう飴にはアリが群がり、彼らはその群れに水をかけたりライターで焼いたりすることに熱中した。今じゃ彼らは銀座線にアリのように群がり、アリのようなスーツを着て、アリのように太陽に焼かれている。ありのままに、ではない。真面目なのか不真面目なのか判断しかねる表情で、空の様子を気にして酒の雨をずっと待っている。